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琵琶湖疎水のこと  金田弘志2017.11

もう、半年ぐらい前になりますが、琵琶湖疎水についての講演会に行く機会がありました。京都で生まれ育った私にとっては、琵琶湖疎水は慣れ親しんだあたりまえの光景であって、その恩恵について、特に意識してきたことがなかったのですが、講演を聞いてみると、このプロジェクトのコンセプトの偉大さ、深さに非常に感銘を受けました。

 

京都に住んでおられない方は、琵琶湖疎水をご存知ないかもしれませんね。

琵琶湖疎水とは、滋賀県の琵琶湖から京都市へ水を供給している水路です。

 

私が今住んでいるのは、丁度その琵琶湖疎水の中間点ぐらいのところ。毎朝、電動自転車で北に向かって坂道を上がると、そこに琵琶湖疎水が流れています。その脇の遊歩道を通って会社に通勤しています。

緑に囲まれた景色は素晴らしいのですが、難点はたまにイノシシやシカに出くわして、怖い目にあうことです。

 

琵琶湖疎水の京都の入口は蹴上(けあげ)です。ここを起点として水路は市内を分かれてゆきます。

近くには、南禅寺という大きな禅宗の寺があり、そこにはテレビのロケによく出てくる南禅寺水路閣があります。

水路閣のデザインは琵琶湖疎水の設計監理担当者の田辺朔朗(たなべさくろう)当時21歳です。卒業論文「琵琶湖疎水工事の計画」が高い評価を受けての抜擢でした。

 

琵琶湖の取水口から蹴上まで約8km。その高低差はわずか3.4mだそうです。この高低差がなかったら、このプロジェクトは実現できなかったということになります。

琵琶湖疎水は、明治18年に着工しました。当時の目的は以下のとおりです。

 

① 水道用水・農業用水・工業用水・下水の掃流・防火用水(御所・東本願寺等)

② 水力発電(当時は市電等に供給された)

③ 水運(船による運搬)

④ 観光資源、また南禅寺界隈の庭園(池)にも利用された

 

京都市民は今も用水、観光資源では大きな恩恵をうけているわけですが講演会では、まだまだ、観光資源として活用の余地があり、舟運(シュウウン)による観光開発をさらに進めようという計画もあるようです。

 

いまだに大きな恩恵を与え続けている琵琶湖疎水のような提案は建築・土木のジャンルをこえて素晴らしいと思います。仕事上、設計競技(コンペ)にかかわることもありますが、その着想は大いに参考となるところです。

金田弘志