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釣魚雑文 山女魚とサクラマス 田中 誠司2019.10

釣魚雑文

山女魚とサクラマス

 山女魚(ヤマメ)が海に降り、大きく育って産まれた川に戻ってくる。
春の桜が咲くころに戻ってくるので、サクラマスと呼ばれている。なんとも直截的な言い回しだが、いかにも日本語らしくて好ましい。山女魚はサケ目サケ科の魚で食卓でもお馴染みの鮭とは親戚みたいなものである。
お馴染みのサケはほとんどが海へ降り、大きくなって戻ってくる。テレビなどで遡上するサケの様子を目にしたことがあると思います。50~80cmくらいはありそうな大きな魚です。 川に残った山女魚は大きくなっても30cmくらいでしょうか。だから尺上(30cm超)を渓流の釣り人は垂涎して切望する次第なのです。
山女魚(毛鉤をくわえている)
サクラマスになるとやはり50~70cmになるのですが、これを釣ることはほぼ絶望的なので私の頭の中では「存在しない。」ことになっています。
ある民宿のサクラマスのはく製
おもしろい研究の話を知りました。
強くて餌をとることが上手な山女魚が川で大きくなって、さらに野望を抱いて海に降り豊富な餌を多量に摂取しさらに強く、大きくなって川に戻ってくものだと今まで思っていました。
けれどその説によれば、川でうまく餌をとれないヘタレで弱い魚たちが仕方なく、生きるために海を目指すと言うではないか。確かに食うに困らず、海より外敵の少ない住処(川)を出る必要はありません。海は広くて、餌も豊富だが自分が餌になるリスクも大いに増えるこわいところなのです。まさに目からウロコの話です。
さて仕方なく海に降った山女魚は数年を経て大きく育ち産まれた川に、まさに威風堂々と戻ってきます。子孫を残すための帰還です。
雌を巡って雄同士の熾烈な争いがおこります。川に残った山女魚たちも懸命に雌にすり寄ろうとしますが、大きなサクラマスに一蹴されてしまいます。形勢逆転!積年の恨みをはらしているのでしょうか。自然のおもしろさを感じてしまいます。
ところがさらに面白いことがおきます。サクラマスが受精をする瞬間、俊敏な山女魚が雌に忍び寄り、ちゃっかりと受精します。どちらが受精に成功したかは不明ですが、川に残った魚もやはり強者だったのですね。
2019.09.22
田中 誠司

 

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