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専門結婚式場の動線計画2017.05

―【ノートルダム横浜 みなとみらい】の場合―

ホテルと専門結婚式場の最も大きな違いは、いわゆる「動線」の違いでしょうか。

ホテルのバンケットに付属するホワイエは、一般には共用部です。結婚披露宴を挙げるバンケットは列席者だけの空間ですが、その出入り口から一歩外に踏み出すと、そこは共用部であり、隣のバンケットでセミナーが行われていれば、ホワイエは結婚披露宴列席者とセミナー参加者が混在することになります。

 

近頃は、どこのホテルでも結婚式用のチャペルを備えています。チャペル内は列席者だけの空間ですが、チャペルでの挙式の後、宴会場への移動動線は共用部であることが多く、移動中には全く関係の無い人々と顔を合わせることになります。

 

この、無関係な人々との混在を徹底的に無くそうというのが専門結婚式場の動線計画です。

ホテルは客動線とサービス動線の分離は基本ですが、お客様どうしの分離については一般的には考慮されません。

ところが、専門結婚式場は、

(1)バンケットAの披露宴列席者とバンケットBの披露宴列席者の分離

(2)新郎・新婦と列席者との分離

(3)お客様とサービス動線の分離

と、3つの動線を考慮します。

(2)の「新郎・新婦と列席者の分離」とは、

・チャペルで列席者が席に着き、新郎・新婦の入場のとき、初めてそのウエディング姿を列席者の目に触れさせる。

・挙式後、列席者はバンケットに移動、席に着き、新郎・新婦の入場で、列席者は新たな気持ちで新郎・新婦を迎える。

そのための仕掛けです。

 

結婚式は「非日常」です。

お客さまに、その「非日常感」をより強く感じて頂けるよう、このような動線の分離を行なうのです。

 

1バンケット・1チャペルの場合は単純です。午前の挙式、午後の挙式と時間をずらせば比較的簡単に解決できます。

ところが、チャペルが一つでもバンケットが二つ、あるいは三つ、しかもバンケットを一日2組、あるいは3組稼働させるとなると大変です。

さらに、列席者と新郎・新婦を分離するとなると、さらに大変です。普通にプランニングをすると、どこかでお客様どうしが鉢合わせになったり、客動線とサービス動線がクロスしたりします。

 

これを解決するキーになるのが「時間差」と「立体交差」です。

ノートルダム横浜の場合は、2チャペル・6バンケットと、ひとつの結婚式場としてはMaxの構成を持っています。

そして、さらに一般市民の動線まで加わります。

 

専門結婚式場は、他界と隔絶させるのが通常です。世俗と隔絶することで、お客様にはより強い非日常性を感じて頂けるからです。だから、建物の中はもちろん、敷地の中にすら一般市民が立ち入ることが憚(はばか)られる雰囲気があります。

ところがこの敷地は地区計画により、海に沿って一般市民が自由に通れる「水際線プロムナード」を設けることが求められていました。(上の写真)

さらに各街区が整備されれば、地下鉄馬車道駅からの市民動線が2階レベルで繋がるようになります。

この、地上と2階レベルの市民動線は、建物の中を貫通して、道路側と水際線プロムナード側が結ばれなければなりません。

そこで、列席者や新郎新婦の動線を2階で振り分けることにしました。

1チャペル・3バンケットを1セットとし、それを東西のウィングに分け、その間に市民動線を貫通させたのです。

1階は、結婚式の受付を兼ねたカフェと衣装ゾーンの間に市民動線を通しました。カフェとブティックの間を通る雰囲気です。

 

2階で振り分けられたお客様は、以降、他の無関係な人々と顔を合わせることはありません。この先はノウハウになるので詳しくは書けませんが、これも「時間差と立体交差」を使って解決しているのです。