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「省エネ空調」 藤井匠2015.09

8月に連日暑い日が続いたかと思うと9月になって急に寒くなり、京都はすっかり秋の空気が漂ってきました。涼しくなったのは嬉しいですが、急な温度変化に体調を崩したりしていませんか。

 

さて、今回は省エネ型空調システムのお話です。

空調というとエアコンを想像する人が多いですが空気を循環させて温度、湿度、気流、換気(給排気)を制御する技術全般を空調と言います。今回見学させて頂いた省エネ型空調システムは地中熱を利用して、換気による冷暖房負荷の削減を図るものです。

年間を通して温度変化が安定した地下5mまで熱交換パイプを埋め込み、パイプ内を経由して外気を室内に取り入れることで夏なら3035℃の外気を2730℃まで冷却し、冬は05℃の外気を58℃程度まで高めた給気が出来るとのこと。また外気を地中パイプ内に溜めた水に触れさせることで除湿や埃除去もできるそうです。

 地中熱スケッチ

(地中熱スケッチ)

 

この空調システムを実際に導入した工場があるということで某新築工場の見学会に参加してきました。こちらの工場では精密金属加工を手掛けており、サブミクロン(1万分の1ミリ)単位の製品加工を行っているそうです。これだけ精密な金属加工を行っていると工場内の温度管理は製品品質に関わる重要問題。季節の寒暖差や朝昼夜の温度変化、工場内の温度分布によって加工機械や材料に歪みが生じるからです。(1mの長さの鉄は1の温度変化で10μm伸縮するとのこと)

 

この会社では工場建設に先立ち3つのテーマを掲げました。

24時間一定温度(±1)

・クリーン環境(陽圧制御によるクリーンエアー環境)

・省エネ(10h稼動の従来工場から24h稼動の新型工場で空調電気代を同額)

 

工場の屋根、外壁を高断熱、高気密、高遮熱仕様とし、空調システムを種々検討されたそうです。そして、省エネ空調システムの柱として導入したのが地中熱利用換気システム。

実際に1年間稼動させてみた結果を見せて頂きました。工場内は金属加工をしているとは思えない程、臭いが少なく空気が新鮮でした。データを見ると真夏のピーク時では設定温度を超える時間もあるようでしたが概ね設定温度内で推移しているようです。エアコンと換気システムを併用することでピークカットができ、電気代も当初の目標通り抑えることが出来たそうです。

なにより工場内に新鮮空気を導入することでクリーン環境(粉塵の少ない空気環境)と安定温度を確保し、生産性を上げることが出来たことがもっとも良かったことだそうです。

 金山精機製作所滋賀工場_1Fs

 (工場内写真)

 

高断熱、高気密、高遮熱の建物では給排気の方法が重要になってきます。密閉された室内には常に新鮮な空気を供給する必要がありますが、外気をそのまま取り入れると温湿度差や花粉・埃まで取り入れてしまうことになるからです。

大型施設では外調機と呼ばれる機械によって温度、湿度、粉塵除去を行った空気を室内に取り入れ、更に機械で排気しています。こうした空調機械は導入コストと維持管理の負担が問題となってきます。

地中熱利用換気システムではファンを使って外気を取り入れパッシブエネルギーを利用して温度調整を行う単純な構造で外調機と同じ働きをしています。ただ、効果としては非常に緩やかのもので外調機程の効果は期待できません。かわりにメンテナンスがほとんど要らないこと、省エネであることがメリットとして挙げられます。

 

今回は精密金属加工工場での導入でしたが24時間空調が必要で室内をクリーン環境に保ちたい施設には導入メリットがあるのではないかと感じました。具体的には老人福祉施設や食品加工施設が考えられます。特に、老人ホームなど24時間施設内で生活されるお年寄りにとって温度、湿度の管理は重要ですし、室内を常に新鮮空気に入れ替えることで施設内の臭いの問題にも作用できそうです。(エアコンの苦手なお年寄りにも緩やかな空調環境は良さそうです。)

建物がただの箱ではなく数々の性能をもった器であることが求められる昨今では、高断熱、高気密、高遮熱仕様も含め、導入を検討したいシステムでした。

2015.09.18